戻らない時間 7
救急隊の方からの電話でした。
「ご主人が倒れられ、すでに亡くなられました」。
とても信じられませんでした。
子どもたちと、あわてて救急病院へ駆けつけ、目の前に横たわった夫の姿を見ても、信じられませんでした。
「これが夢なら、どうか、早くさめて」と祈るばかりでした。
亡くなる四、五日前から、体の不調を訴え、病院に通いながらの出勤でした。
以前から喘息の発作をときどき起こしていたのですが、その日はとくに、「しんどい」と言っていたのです。
会社を休むように言ったのですが、「ほかに代わってもらえる人もいないし、今晩の夜勤があければ、明日は休みだから、もう一日がんばって行ってくる」と言い、でかけたのです。
不安な気持ちで見送った夫の姿が、私が見た最後となりました。
葬儀のとき、会社からは、三、四人の方しか来られず、「香典は普通、準社員は一万円ですが、お宅は特別に三万円を包みました」と言われ、そのほかの補償はいっさいありませんでした。
慰労金も退職金もなにもないまま、三万円の香典のみで、すべてが終わってしまったのです。
あまりにも誠意のない会社のやり方です。
夫は、日ごろから仕事にまじめで、めったに会社を休むことはなく、一生懸命働いた明るい人だったのに……。
お葬式で私たちが悲しみにくれているあいだ、会社側は茨木労働基準監督署へ行き、まだ死亡診断書も見ていないのに、「死因は肺炎だから、この件は労災の認定外です」と、念を押してきたそうです。
香典三万円って、なんだか悲しすぎて怒りが湧いてきそうですね。